雪崩事故後に見られる後だしジャンケン現象について

雪崩事故があると、後出しジャンケン的な事後発言をされる方がいますが、

そう言いたくなる人の気持ちもわからないでもありません。

 

が僕が、今回の件で思ったことは、

 

「やはり雪崩は難しい」

 

ということであり、

 

「やっぱりな、だから言ってたのに」

 

ではありません。

 

 

雪崩ネットによる調査でわかった今回の雪崩の引き起こしたと思われる原因は、事故前日まで続いた荒天によってもたらされた雪によるものではありませでしたし、あられでもシモザラメでもありませんでした。弱層と滑り面はそれよりもっと以前(15日以前。形成日に関しては検討中)に形成されたと思われるもので、地面にほど近いこの層の脆弱性に関して言及している人は、JANの雪の掲示板にのっている投稿のみで、僕の知る限り他にはいません。他にいたら、教えて頂きたいと思います。

 

コンプレッションテストでは、深い位置の不安定性の検証には限界がある。
コンプレッションテストでは、深い位置の不安定性の検証には限界がある。

 

今回の教訓は、「正しく恐れることの難しさ」だと思ってます。

 

今回のようなサイズ3にも達する大規模な雪崩の原因となる層は、通常人間の重さでは誘発できない深さにあることがあります。

ただ、そういった深部の層でも、積雪の浅い場所を通過したり、それより上の層から小さな雪崩を誘発した結果、次の大きな雪崩を誘発したりするケースもあります。

 

なので、こういった深い位置にある不安定性のリスクを感覚ではなく、適切な言葉でシンプルに他人に伝えることはとてもむずかしいのです。

 

伝えることの難しさから、それを放棄した人間(職業としてこの業界に関わっている方にも多い)が、

 

「やっぱりな、だから言ったのに」的な発言をするのではないかと思っています。

 

 

とはいえ、

大走り沢は複数の発生区があり、凸状斜面で、雪の状態がうんぬん以前に、地形的なリスクが高い地形の罠といえます。

 

「積雪状態に自信がない場合は、基本的な地形にもどれ。地形はいつも変わらない」とは、北米ガイドの基本的な格言です。

 

歴戦のプロのガイドであっても、時に積雪に関してはわからないことがあり、

また、わからない事自体を問題とはしていないのです。

 

プロでも正確に認知していたか疑わしい今回の不安定性の認知を、週末戦士の方々に求めるのは酷な事だと思いませんか?

 

 

「やっぱりな、だから言ったのに」的な発言は、

善意からの発言とはいえ、問題の解決にもつながらず、

あまりに非生産的です。

 

 

 

下記は、2011年の小日向山事故でなくなった故石川哲也ガイドが、

地元のプロガイドの皆さんに雪の掲示板への投稿を求めるために書いた意見書より、抜粋です。

石川氏が亡くなる前年の秋の立山で、同じく白馬の磯川ガイドがなくなった事に対して、石川氏は自分がもっと出来ることがあったのではないかと、自省して書いたもの、と聞いています。

 

 

「また、情報提供は道徳的・人道的な観点から行う行為であり、プロとして現地の山麓で活動する以上は積極的に行うもので、過去の事故事例を真摯に受け止めるべきである。」

 

当事者への安易な批判ではなく、

プロとして自分は何か出来る事があったのでは?という自省と自責の念が、

健全なプロフェッショナリズムといえるのではないでしょうか。

 

 

ポジティブな解決方法は、

現場に入っている人間が、データを採取し、情報を共有することと、

それらをまとめ、解釈し、雪崩情報として発信することであると思っています。

  

 

 

 

YH

 

11/26 22:00 追記

 

・11月初旬に形成される融解凍結クラストとコシモザラメ雪のコンビネーションが積雪底部に一定期間持続すること自体は、珍しいことではなく、北米においてもNovember Crustとして、シーズンはじめにはしばしば問題とされます。また、当日までに大量降雪があり、それ自体にも今回の雪崩とは別の不安定性が存在していました。ここで問題としているのは、同時に存在する異なる不安定性を区別し、そしてそれを共有することの難しさについてです。

 

 

 

 

 

クレイグ・ケリーの師匠。30年選手でもデータ記録と共有を続けている。
クレイグ・ケリーの師匠。30年選手でもデータ記録と共有を続けている。

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コメント: 11
  • #1

    伊藤 慎 (火曜日, 26 11月 2013 17:36)

    この意見には全面的に賛成です、もし自分がその場にいたら避けられたのか?このくらい深い弱層に対しての警戒は普段から自分の中になかった事であり、この事象はショッキングでした、やはり雪山は難しい、無事に家に帰り着く為にさらに謙虚に注意深く行動しようと思いました。

  • #2

    井上 敦 (火曜日, 26 11月 2013 19:54)

    貴重な意見ありがとうございます。今後の山での活動に活かしていきたい所存です。

  • #3

    安田 隆宏 smilefarmer (水曜日, 27 11月 2013 00:18)

    僕はプロになるのを止めた人間です

    データを残す=人材育成

    いかにガイド会社やプロがデータを共有してそれをどういかしていくかしかないです

    ガイド会社は今後 マニュフェストのようなものを残していかないと 今後もガイドの犠牲者がでるでしょう

    ニセコ雪崩情報を更に活かしていく取り組みがもっとあって良いと思うし

    立山だけの問題ではなく国や旅行会社が全力で取り組みが急務ですね♪

  • #4

    内原浩介 (水曜日, 27 11月 2013 00:24)

    JANの速報では、弱層はこしもざらめとの事です。
    http://nadare.jp/2013/11/131123.html

    また、15日以前ではないかとの事ですが、破断面の最も厚いところが140cm程度ですので、丁度17日以降のまとまった積雪分だと思います。

  • #5

    blindside (水曜日, 27 11月 2013 01:49)

    皆さま、有り難うございます。コメント欄での議論は、行き違いになる可能性が大ですので、個々のコメントに関する返答は控えさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。お読み頂き有り難うございました。廣田勇介

  • #6

    阜泉庵 (水曜日, 27 11月 2013 11:09)

    新雪期の立山周辺は雪崩が頻繁に起こるということは、昔の(バスやケーブルが無かった頃)登山者の間では常識でした。 今皆さんが滑っているどの斜面も雪崩の危険性はあるのです。 今回の雪崩だけでなく昨年、一昨年の雪崩事故を見て下さい。 スキーで滑りたくなる普通の斜面で起こっています。 標高が他に類をみないほど高いので、他の山より新雪が安定しないのです。 私は11月の末の立山スキーに誘われますが、このような理由でお断りしています。 ここでスキーを楽しむなら4月半ば以降でしょう。 

  • #7

    Kazuko Ishihara (水曜日, 27 11月 2013 14:25)

    私は、この事故の数日前に立山にいました。(16日~19日)
    ご意見の通りだと…後日になってからは、何でも付け加えることができます。
    私が現地にいたときの状況は、15日まで、悪天候・みぞれ交じり、16日終日~17日AM中晴天、しかし、朝から吹き始めた風が、昼頃には10㍍超えていました。その後、夜半まで、かなりの強風により、いままで降り積もった雪が移動し、場所によっては1㍍の深さに・・・。この日の午後には、立山カールでも、滑走による雪崩発生。スキーヤー自身が、自分の滑った後が、雪崩になったと話していました。18日から本格的な雪と強風、ほぼホワイトアウト状態、PMからは、みくりが池温泉からターミナルもかなり歩行が危険な状態でした。その吹雪は、この事故の前日まで、続きました。
    ただ、残念に思えるのは、この外の状況をホテルやいろいろなところへ話をしても、活用してくれる場が無いことです。
    帰宅時に、ホテルのフロントの人に頼んできたのは、『この悪天候が、回復したら、経験者が外を、一回りして状況を確認して欲しいと、そうでないと、散策に出た人であっても、事故に遭遇してしまう可能性が高いと・・・』
    そうした言葉を残して帰ったほど、当時の立山の雪の状況は、悪いものでした。
    一般の人でも、簡単にあの標高まで、登れてしまうことの、利便性だけでなく、危険や情報のアンテナをもっと、広げて欲しいと思います。

  • #8

    Komei HANAI (木曜日, 28 11月 2013 00:48)

    廣田さんご意見に全く同感です。犠牲者を非難しても、反論も説明も出来ません。 残念乍ら、立山には行ったことありません。 誰も非難も批判もするつもりはありません。 ポジティブな改善が出来ると良いですね。 室堂、山麓駅などで、現地に詳しい、自治体、警察、交通機関、宿泊施設などから随時、危険予想地域、日時などのガイダンス、アドバイスはあるのでしょうか? 数時間の乗り物で大勢標高2400m に来られる所で、適格者だけを選別するのも無理でしょうし、特に危険な初冬、初春の1〜2週間、事故起きて大量動員を少しでも減らせると良いと思います。 私も常に危険を伴う深雪スキーが大好きですが、ゲレンデでも海水浴でも事故はあるし、道路での自転車は、スキー以上に危険を感じるし、オートバイはさらに危ないし、自動車がさらに事故多いでしょうか? 事後の非難より、未熟者としては、熟達者から、『今日何時から、あの地域は危ない。』のアドバイスあれば大変助かります。(^^) 皆さんのネット情報とても参考になります。 命がけだけど、無事故で楽しく遊びたいです。(^^)

  • #9

    blindside (木曜日, 28 11月 2013 09:56)

    皆さま、コメント有り難うございました。もし、山岳で雪崩やその徴候などを目撃、観察した場合は、日本雪崩ネットワークにお知らせ頂ければとおもいます。http://nadare.jp/info/index.html
    現在は白馬地方でしか、雪崩情報を提供しておりませんが、今後はエリアを拡げていく予定だそうですし、雪崩情報が出ていないエリアに関しても、ある程度まとまった情報が集まりますと、メーリングリストに登録されている方に関しては、お知らせが来るようになっているようです。

  • #10

    M.K (土曜日, 07 12月 2013 15:07)

    はじめまして。

    書き込みをするか非常に迷いましたが、思う所あり投稿させて頂きます。

    何もわからず発言しているような、方々は論外として、本当に理解しているか根拠に乏しい後出しジャンケンには如何なものかと思います。

    では、今回被害に遭われた方の行動は正しかったのか?
    結果論から言えば、正しくなかったわけです。

    ご存知の通り現場の地形は、典型的なアバランチ・パス上にあり地形の罠(第一の過ち)でありました。

    また、シーズンインのこの時期は寒気と寒気の間の日射で融雪することもあり(サンクラスト)、また立山と言えども降雨があるのも珍しくなく(レインクラスト)、積雪内にクラストが現れる事は容易に想像が着きます。積雪内のクラストは、温度勾配を持ちますので[こしもざらめ]や、勾配が強ければ[しもざらめ]などの持続性の弱層(PWL)が形成される事は、ピットで確認するまでも無い事です(第二の過ち)。

    23日までの荒天でPWLが奥底に眠っている事などBCに入るのであるならば、誰もがその事を念頭に入山するべきなのです。


    『歴戦のプロのガイド』


    であるなら、尚の事です。


    ヒューマンファクターについては、私は当事者でも関係者でも無い傍観者なのでわかりませんが、近年大声で叫ばれている『アバランチ・ハザード・トライアングル』の内2つのファクターが該当しているのは誰の目で見ても明らかなのです。



    〉地面にほど近いこの層の脆弱性に関して言及している人は、JANの雪の掲示板にのっている投稿のみで、僕の知る限り他にはいません。他にいたら、教えて頂きたいと思います。


    …私は22日に雷鳥沢キャンプ場入りし、テント設営で穴を掘っている時に100cm前後にクラストを確認しています。
    ルーペもスノーゲージも雪温計も持って来ていません。
    温度勾配があり、PWLがあることは確認するまでも無いからです。

    分かり切った事の為にスノースタディキットを持って来るほど荷物に余裕はありませんでした。

    この事は23日に下山し24日に帰宅後、自分のFacebook、mixiなりに記載し言及しております。

    ネットで晒し者になるつもりはないのでここでは記載しませんが、ご確認されたければメールで一報差し上げます。


    JANや雪崩事故防止研究会などの活動を否定する気はサラサラありませんが、日本の
    ピット掘ったらOK!!
    ビーコン持ってるからOK!!
    コンプレッションテスト(CT)したからOK!!
    エアバック持ってるからOK!!

    のような半ば免罪符のように呪文を唱える教育から脱却するべきでは無いかと思います。私は、そのような講習会に出たことが無いのでわかりませんが、少なくともそのような人達を多く見受けます。


    今回のような積雪状況でCTのみで判断したのであれば、短絡的過ぎると言わざるを得ません。

    ピットを掘らなければ積雪状況がわからないと言うならば、深部の弱層に関して、CTはつかえませんからディープタップテスト(DT)を行うべきでした。



    グレイグ・ケリーの雪崩事故も山岳ガイドの事故でしたね。
    シーズン中ほぼ毎日自分のエリアへ入山しているルディ・ベグリンガーでさえもあの様な事故に遭遇するのかと雪崩は本当に難しいと思う事例です。



    今回書かせて頂いたのは、特定の人物や団体を誹謗、中傷、貶める目的ではなく、より良い日本の雪崩教育や、質の良いガイド育成、雪崩啓蒙につながればと思い、
    またそのような立場にいらっしゃる廣田ガイドに僭越ながら思う所を述べさせて頂きました。

    長文乱文失礼致しました。



    名乗るほどでも無い『週末戦士』より

  • #11

    blindside (土曜日, 07 12月 2013 15:19)

    皆さま、引き続きコメントを有り難うございます。
    申し訳ございませんが、コメント欄は議論するのに適切なツールといえません。
    また、今回の事故に関して、何か情報をお持ちであればDMを問い合わせ欄より頂くか、雪崩ネットワークにご連絡を頂ければと思います。よろしくお願い申し上げます。廣田勇介